Suica×PASMO「teppay」とタッチ決済で2026年は何が変わる?日本のMaaS×キャッシュレス決済最新動向

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日本のMaaS(Mobility as a Service)とキャッシュレス決済は、ここ数年で交通IC・タッチ決済・コード決済の三本柱が一気に伸びています。
結論から言うと、2025~2027年は「交通×金融のスーパーアプリ化」が進む転換点であり、鉄道・バス事業者だけでなく、小売・観光・金融業にとってもビジネスチャンスが拡大するタイミングです。
なぜかというと、政府のキャッシュレス比率はすでに40%を超え、交通分野ではタッチ決済・コード決済の大型プロジェクトが同時多発的に進んでいるからです。
本記事では、以下3つの観点から、日本の最新動向と市場インパクトを整理します。
1. オープンループ型タッチ決済の拡大
2. Suica・PASMOの新サービス「teppay」
3. 市場データから見るキャッシュレス・MaaSの今後

1. タッチ決済で乗れる「オープンループ乗車」が本格化

1-1. 羽田空港周辺から始まった都営地下鉄×京急の実証

東京都交通局と京浜急行電鉄、三井住友カード、Visa、JCBなどは、2024年12月21日からタッチ決済対応のクレジット・デビット・プリペイドカードを自動改札にかざすだけで乗車できる実証実験を開始しました。対象は都営地下鉄26駅+京急線10駅で、羽田空港と品川・都心方面を結ぶインバウンド向けルートにフォーカスしています。

京急側は、2025年中に京急線全駅でタッチ決済による乗車を可能にする方針を掲げており、羽田空港を起点に「成長トライアングルゾーン(品川・羽田・横浜)」を強化する戦略と位置づけています。

1-2. 2025年9月、都営地下鉄で55駅まで拡大

2025年9月10日からは、この実証実験の対象駅が都営地下鉄55駅まで拡大されました。2024年12月に浅草線・大江戸線の26駅で始まったタッチ決済乗車サービスを、都営地下鉄全106駅のうち55駅まで広げるもので、公共交通向けソリューション「stera transit」が引き続き活用されました。

東京都は、2025年度内に都営地下鉄全駅でのタッチ決済導入を目指しており、インバウンド旅客やICカードを持たない利用者にも使いやすい環境づくりを進めています。

1-3. 首都圏11社局が「タッチ決済で相互直通」へ

さらに2025年10月には、首都圏の大手私鉄・地下鉄11社局(小田急・京王・京急・東急・東京メトロ・都営地下鉄・東武など)と三井住友カード、JCB、オムロン、QUADRACが、クレジットカード等のタッチ決済による後払い乗車サービスの相互利用に向けた共同事業協定を締結しました。

2026年春以降、タッチ決済対応カードやスマホを自動改札の専用端末にかざすだけで、対象11社局をまたいでシームレスに乗車できるようになる予定です。対応ブランドはVisa、Mastercard、JCB、American Express、Diners、Discover、銀聯の7ブランドが予定されています。

1-4. バスでも広がるタッチクレジット

鉄道だけでなく、京急バスも羽田空港関連のリムジン路線などで「タッチクレジットカード決済」を段階的に拡大しています。2025年3月15日・4月1日・7月16日から、それぞれ利用可能路線を追加し、Visa・JCB・American Express・Diners・Discover・UnionPayなど主要ブランドに対応しています。

ポイント:

  • 「交通系IC(Suica/PASMO)」に加え、「オープンループ型(クレカタッチ)」という選択肢が増えた
  • 特にインバウンドやビジネス出張者にとって、カード1枚で鉄道・バスにそのまま乗れる利便性が高い
  • 交通事業者にとっても、MaaSアプリや観光パスとの連携を前提にしたデータドリブンな運賃・商品設計がしやすくなる

2. Suica・PASMOのコード決済「teppay」で生活決済プラットフォーム化

2-1. teppayとは何か

JR東日本とPASMO協議会・東京都交通局は、モバイルSuica/モバイルPASMOをアップデートし、新たなコード決済サービス「teppay(テッペイ)」2026年秋からJR東日本(モバイルSuica)で、2027年春からPASMO(モバイルPASMO)で提供すると発表しました。

モバイルSuica・PASMOアプリさえあれば追加のアプリ導入は不要で、アプリ内に「teppay」ボタンが追加され、そこから以下の機能が利用できます。

  • スマホ画面を提示するコード決済
  • 家族・友人間で残高をやり取りできるP2P送金機能
  • モバイルSuica/PASMOへのチャージ
  • インターネット決済に使える「teppay JCBプリカ」の発行
  • 自治体のプレミアム商品券などに使える地域限定バリュー(バリチケ)

コード決済は、2025年10月末時点でJCBの「Smart Code」スキームを通じて全国160万か所以上の加盟店で利用可能とされており、従来の交通系電子マネーの利用シーンを大きく超えるポテンシャルを持ちます。

2-2. Suica Renaissance:移動デバイスから「生活デバイス」へ

JR東日本はグループ経営ビジョン「勇翔2034」の中で、Suicaを「移動のデバイス」から「生活のデバイス」へ進化させる「Suica Renaissance」を掲げています。今後10年間で、移動・決済だけでなく地域の様々な生活シーンで使えるデジタルプラットフォームにする方針です。

teppayはその中核機能のひとつであり、以下の役割を担うことが期待されています。

  • MaaSアプリのID
  • 地域通貨・商品券の受け皿
  • オンライン/オフラインの共通ウォレット

3. 市場データから見る日本のキャッシュレス&MaaSの行方

3-1. 日本のキャッシュレス比率は42.8%、コード決済も約1割に

経済産業省の集計では、2024年のキャッシュレス決済比率は42.8%(141.0兆円)に達し、その内訳はクレジットカード82.9%(116.9兆円)、デビットカード3.1%(4.4兆円)、電子マネー4.4%(6.2兆円)、コード決済9.6%(13.5兆円)となっています。
2022年の36.0%からわずか2年で約7ポイント伸びており、とくにコード決済の比率が大きく上昇しています。

また、市場調査会社GlobalDataのレポートタイトルが示す通り、2025年に日本のクレジット・チャージカード決済は9.4%成長すると予測されており、カード決済は依然としてキャッシュレスの中心です。

3-2. 政府目標を前倒し達成、80%に向けた第2フェーズへ

日本政府は、2019年の成長戦略で「2025年までにキャッシュレス比率40%」、将来的には「80%」という目標を掲げてきましたが、 2024年時点で「42.8%」に到達したことで、「目標達成」から「さらなる高度化・多様化」のフェーズに入ったと言えます。

さらに、デジタル給与・デジタル地域通貨など「お金のデジタル化」や、デジタル円(CBDC)検討の加速など、お金に関する急激な革新が進んでいる中、MaaS・キャッシュレスはインフラ・データプラットフォームとしての重要性を増していると言えるでしょう。

まとめ:MaaSとキャッシュレスは「これから5年」が勝負

日本のMaaSとキャッシュレス決済は、以下によって交通と金融が一体となった「日常のDX」が加速しています。

  • タッチ決済によるオープンループ乗車の本格化
  • Suica・PASMOのteppayを軸にした生活決済プラットフォーム化
  • 政府目標を超えたキャッシュレス比率と、カード・コード決済の成長

この流れをどう自社のサービスやキャリアに結びつけるか——それを考えることが、これからの5年間で大きな差を生むと言えるでしょう。


参考・出典

本記事は、以下の資料を基に作成しました。


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